こんにちは。
今まで住居系用途地域、商業系用途地域と順番に解説をしていきました。
そもそも「用途地域」とは、住居、商業施設、工業地帯が混在することでそれぞれの利便性が損なわれることのないように、制定されたものだと最初にお伝えしましたね。
それでは、問題です。
「工業系地域に、住宅は建てられるのでしょうか?」
すぐ近くに大きな工場があると、人や車の出入りが激しくて混雑したり、騒音があったり、なんかあんまり人が住むイメージがないけどなぁ
そうですね。「工業地域」とだけ聞くと、工場しか建てられない地域というイメージが沸いてきますよね。でも、実は「工業地域」には3つの種類の用途地域があるんですよ。
この問題にバッチリ解答が出来るように、今回は3種類の「工業系用途地域」について徹底解説をしていきます!
工業系の用途地域とは?
工業系の地域と聞くと「工業地帯」や「工業団地」という言葉を想像する方も多いかもしれませんが、実は工業系の用途地域には「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」の3つがあり、それぞれに用途制限が異なります。
中学の地理で「日本の四大工業地帯」を習ったな~。
そうですね。四大工業地帯のひとつ、京浜工業地帯はまさしく工業専用地域ですよ。東京都の大田区から神奈川県の川崎市、横浜に広がるエリアです。
先ほどの問題の解答ですが、答えは「準工業地域」と「工業地域」では住宅が建てられます。
しかし、「工業専用地域」はその名の通り、工業に特化した地域ですから、工業系の地域の中で最も規制が厳しく、13種類の用途地域の中では唯一、住宅を建てて住むことが出来ません。
また、用途地域が大丈夫でも、実際「準工業地域」や「工業地域」に戸建て住宅を建てたり、マンションを購入してる人が実際いるのか、住宅用地として工業系地域に土地などを購入して大丈夫なのかという点も気になりますよね。
住宅系、商業系と今まで解説していく中で徐々に建てられるものが増えてきたイメージでしたが、ここからは「工業地帯」に合わないものが徐々に建てられなくなっていきます。つまり一部の規制がまた強まっていきます。
それでは早速、工業系用途地域それぞれの用途制限や周辺環境などを解説していきます。
基本的には商業地域と似ている「準工業地域」からスタートです。
意外に住みやすい準工業地域
準工業地域は、主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域とする。
都市計画法第9条11項
準工業地域は、住宅や学校、商業施設等のなかに「中小の工場」が混在する地域です。
住居系の用途地域の次に、住宅が多く建てられています。
戸建て住宅やマンションなどが、古い町工場や倉庫と混在している場所も見られるでしょう。
工業系地域とはいっても、危険性の高い工場や著しく環境を悪化する恐れのある工場は建てることが出ませんが、店舗や公共施設、レジャー施設、学校や医療機関、福祉施設など、ほとんどの用途の建築物は建てることができる、非常に利便性の高い地域なのです。
また、都市開発によって新しく道路が開通し、大型店舗が立ち並ぶことも珍しくありません。
- 住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
- 幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、診療所、公衆浴場、老人ホーム、身体障害者福祉ホーム、老人福祉センター、児童厚生施設、神社、寺院、教会、保育所、交番
- 店舗(面積制限なし)
- 事務所(面積制限なし)
- 工場(面積制限なし・ただし危険性が大きいか、又は著しく環境を悪化させる恐れのある工場を除く)
- ホテル・旅館(面積の制限なし)
- ボーリング場・スケート場・ゴルフ場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等(面積の制限なし)、映画館、劇場、料理店、キャバレー、ナイトクラブ
- 自動車修理工場(面積の制限なし)
- 倉庫業の倉庫
- 個浴付き浴場(個室浴場型の性風俗店など)
- 危険性が大きい工場・または著しく環境を悪化させる恐れのある工場
自動車修理工場の面積の制限が無くなったね!
商業系地域は、自動車修理工場の面積制限(300㎡以下)がありましたよね。そして倉庫業にも向いているのが準工業地域です。
再開発が活発な工業地域
工業地域は、主として工業の利便を増進するため定める地域とする。
都市計画法第9条12項
工業地域は都市計画法で上記のように定められており、必ずしも安全な工場ばかりではなく危険性の高い工場や環境悪化の恐れのある工場でも建築が可能とされています。
ただ近年は、工場跡地などに住宅や高層マンションや大型商業施設の建設が進み、再開発がよく行われてきています。
これは、住宅系地域よりも、地価が安い、建築制限が緩和されているなどの理由が挙げられ、その影響を受けて実際に販売されている住宅やマンションの価格も比較的手頃な値段になってるのです。
工場が多く住宅が少ない場所は、その地域の人口が昼間は多く夜は少ないということを示しており、人気のないエリアは夜間の治安の悪さにもつながります。
お子さんがいる家庭で工業地域エリアの住宅を検討している方は、夜間の周辺環境は必ずチェックするようにしましょう。
また、トラックが頻繁に出入りするため、通勤・通学中の事故も心配です。
車の通行量はどのくらいあるのかも、必ず確認しておくようにしましょう。
さらに、工業地域では土壌汚染の心配もあります。
工場跡地から有害物質が見つかれば、汚染対策をする必要があります。
手頃な価格は魅力的だけど、しっかり周辺環境を見極めなきゃね。
再開発が多いということは、将来周辺にどの様な建物が建つかわからないというリスクもありますね。また日影規制(日影による中高層の建物の規制)がないため、高層ビルやタワーマンションも比較的建てやすいです。
- 住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
- 保育所、診療所、公衆浴場、老人ホーム、身体障害者福祉ホーム、老人福祉センター、児童厚生施設、神社、寺院、教会、保育所、交番
- 店舗や飲食店(床面積10,000㎡以下のもの)
- 事務所(面積制限なし)
- 工場(面積制限なし)
- 自動車修理工場(面積の制限なし)
- 倉庫業の倉庫
- 幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校
- 病院
- ホテル、旅館
- 映画館、劇場、キャバレー、キャバクラ、ナイトクラブ
- 個浴付き浴場(個室浴場型の性風俗店など)
保育所が建てられることが意外だった!
工業地帯で働いている人の子供を預かる場所が必要だからですね。
必要性があれば、環境が悪かったとしても作らなければならないんです。
住むことは出来ない工業専用地域
工業専用地域は、工業の利便を増進するため定める地域とする。
都市計画法第9条13項
工業専用地域は、まさに「工場の・工場による・工場のための」用途地域といっても過言ではありません。
最初にお伝えしましたが、工業専用地域は、用途地域の中で唯一居住することが出来ない地域です。
コンビナートや工業団地の他に、大規模な工場が立ち並ぶ工業地帯はほぼ工業専用地域に指定されていると考えて間違いありません。
用途の規制がとても厳しく、住宅を建てて住むことが出来ないのはもちろん、店舗についても厳しい規制がかかります。
娯楽施設はほとんど建てられませんが、何故かカラオケ施設(10,000㎡以下)は唯一OKです。
カラオケのみ建てられるのがなんか不思議。
そうですね。
工場で働いているひとのストレス発散の場所になっているといいですね
- 保育所、診療所、公衆浴場、老人ホーム、身体障害者福祉ホーム、老人福祉センター、児童厚生施設、神社、寺院、教会、保育所、交番
- 店舗(床面積10,000㎡以下のもの)
- カラオケ施設(床面積10,000㎡以下のもの)
- 事務所(面積制限なし)
- 工場全般(面積制限なし)
- 自動車修理工場(面積の制限なし)
- 倉庫業の倉庫
- 住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
- 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校、専修学校
- 物品販売店舗または飲食店、もしくは10,000㎡超の店舗
- 病院、老人ホーム、身体障害者福祉ホーム
- ホテル・旅館
- ボーリング場・スケート場・ゴルフ場・パチンコ屋・麻雀屋等、映画館、劇場、料理店、キャバレー、ナイトクラブ
- 個浴付き浴場(個室浴場型の性風俗店など)
工業専用地域は厳しいなぁ。でも、全くお店が建てられなかったら工場で働く人のご飯とかは大丈夫なのかな。
複数の工場の従業員向けのコンビニや社内食堂は、建築基準法の許可を活用すれば建設可能なようです。工場で働く人の利便性も考慮しなくてはならないですからね。
まとめ:工業系地域は入念な下調べが重要
工業系地域は、工場がメインですから、人が住んだり遊んだするには基本的に適していません。
しかし、工業系地域の中でも準工業地域は、実は住宅の購入に向いているエリアだと言われています。
住宅のほか、大型の商業施設や学校、病院などが周辺に立地していたり、住宅地が形成されていたりいていて、住みやすかったり、住居系の用途地域よりも価格が安い傾向にあります。
ただし、近くに工場が立地していると、騒音などの影響を受ける可能性があるため、準工業地域に住むことを検討する場合は、近隣周辺やよく通ることが想定される道路の近くに大規模な工場がないかなど、事前にかならず確認するようにしましょう。
また、検討している土地について詳しく知りたい場合は、やはり不動産のプロに相談することをお勧めします。
弊社でも、周辺環境や建築条件などお客様の理想に合った住まい選び、事務所選びをお手伝いさせていただきますので、気になる土地やエリアがある際は、ぜひ一度お声がけください。
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