こんにちは!横浜市の行政書士宮城彩奈です。
「利用規約」についてどのようなイメージがありますか?「最初に出てくるけど長いし面倒くさくて見てないよ。」という方が大半だと思います。
近年、便利なウェブサービスやアプリが開発され何万個も溢れていますから利用規約は頻繁に出くわしているはずです。
ユーザー側は「面倒くさいし読まない」サービス事業者は「どうせ見てくれないから適当でいい」と思いがちですが、新しいウェブサービスやアプリが日々生み出していく中で、十分な取り決めをしておくというのは確かに難しいです。ですが、最低限の土俵を用意し、万が一のトラブルの解決を図るためのものが「利用規約」になるのです。
重要な役割を持つ利用規約なのに雛形を使って、本当に適当に作ればいいでしょうか。そもそもそのサービスは規制対象になっていませんか?一方的に提供者側の有利な条件にしてないですか?
「規制」は知らんぷりしておけばよい?
頭を悩ませ、考え抜いてやっと生み出したサービスの運用を開始したけど、実は関連の法律に規制があった!なんて事もあるかもしれません。
でも、せっかく考えたサービスだから「やってしまおう」「バレなきゃいい」でやってしまい、結局規制違反でせっかくの事業が水の泡…それではよくありません。
例えば、出会い系サイトであれば「出会い系サイトの規制法」、旅行やホテルの仲介サイトであれば「旅行業法」が関連法になります。
要は最初に、サービスに関連しそうな法律について規制がないかチェックをすれば良いのです。
時代と法律があっていないものはたくさんありますが「これは見方によっては規制にかかるかもしれないけど、かかっていない可能性もある」と考えられるものについては、規制にかかっていないとしっかりと言い切れる材料を用意しておくことです。
海外との取引に関係する条約と注意点。
以前から日本製のものは海外でも好評です。ウェブサービスは簡単に世界を相手にやり取りできるツールですから、商品の売買には切り離せません。ですが、何かトラブルが起きたらどちらの国の法律が適用されるのでしょうか。どう裁判するのでしょうか。そのやり取りにだって、高い交通費を払うことになるのは当然嫌ですよね。
ですから、海外にいる方とやり取りするサービスの場合(海外にいる日本人にも)、特に気をつけなければなりません。
利用規約は契約書と同じような役割をするため、利用規約には「日本法を準拠法とする」「最寄りの東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」との記載を考慮するべきです。これを記載することにより、管轄裁判所は東京地方裁判所・日本法が適用することになります。
「モノ」の売買は注意すべき。
海外の方と物の売買を場合は注意が必要です。
日本は「ウィーン売買条約」という条約を発効しており、個人相手の「モノ」(動産)の売買であり取引相手国もウィーン売買条約の締結国である場合は利用規約をよく検討しましょう。
ウィーン売買条約の概要リンク
とりあえず「一切の責任は負いません。」って入れればよい?
サービスを提供していれば、何らかのトラブルで「損賠賠償を請求するぞ!」とか「金返せ」なんて事も絶対にないとは言い切れません。
「当方は一切の責任を負いません。」というフレーズはよく目にしたり耳にすると思いますが、取引相手が個人の消費者の場合は、事業者に一方的に有利な契約や一切の責任を追わないような文言は「消費者契約法」により無効になる可能性が高いのです。
ですから、責任を追わない範囲と例外的に責任を認める場合の責任の範囲や上限を限定して、消費者契約法により無効にならないように対処しましょう。
3点のまとめ。
実は許認可が必要な場合がある・一切の責任は負わない等の消費者に極端に不利な条文は消費者契約法により制限を受ける可能性がある・海外にいる個人と「モノ」の売買には気をつける、の3点をまとめました。
個々のサービスにより内容が異なるため、他社の同類サービスの利用規約をパクればよいとは言えません。参考にするのはよいのかもしれませんが、あくまで参考にとどめておくのが無難です。
意外にも奥が深い利用規約。「これは規制にかかる?」「忙しくて調べられない」等、悩み事や分からない事は一度専門家に相談してリスクは最小限にしましょう。